2025.10.30

国内初お披露目となる第38回東京国際映画祭の公式上映に児山隆監督が登壇し、 観客と質疑応答を交わしたほか、映画の制作秘話をたっぷりと語りました!
児山隆監督は、劇場映画初監督作品『猿楽町で会いましょう』(2021)以来、2度目の東京国際映画祭への参加となる。上映終了後、観客から賞賛の拍手が沸き起こる中、イベントがスタート。
まず、発表当時、21歳の大学生だった波木銅によるユニークな小説を映画化した経緯を問われた児山監督は、「当時、プロデューサーから面白い原作があるからと勧められ、読んでみたらとても面白くて。是非やらせてくださいと。登場人物たちが自身の境遇に悲観していなくて、小説の構造も、荒っぽさもありながら知性がある。既存の物語に対する反逆心も感じました」と、原作の魅力を交えながらコメント。
ここから観客とのQ&Aに入り、南沙良演じる朴秀美のラップシーンが話題に。児山監督はこの時の撮影エピソードについて、「最後の南さんのラップシーンは、撮影中に思いついたシーンで、撮影の3日前にリリックを渡して挑んでもらいました。また、印象的な撮影エピソードといえは、吉田(美月喜)さんのクランクインが、ボーリング場のシーンだったのですが、南さんと出口(夏希)さんの芝居を傍でニコニコ眺めていた吉田さんが『芸能人が二人いてすごいですね!』と言っていて、かわいらしいなと思いました」と明かした。
また、劇中でオープニングタイトルが出るタイミングにはこだわりがあるそうで、「美流紅の『これはわたしたちにとっての第二部なんだよ』というセリフが好きで、人生の第一部は自分では決められないけど、第二部は任意で決められる。本当にそうだなと思って、あのタイミングで意図的にオープニングタイトルを上げました」といい、ロケーションについても撮影前から舞台となる東海村に何度も足を運び、主人公たちが行きそうな場所をくまなくリサーチしたというこだわりを次々と明かし、「自分も大阪の地方都市出身で、とくに若者の閉塞感は共感できる部分があったので、この映画では鬱屈する部分を表現できればと思いました」と思いを込めた。
今をときめく旬なキャストの共演も話題だが、キャスティングについて児山監督は「朴秀美は、印象としてやさぐれていない人がよかった。今まで南さんは、こういった役はやっていらっしゃらなかったので、直感で朴秀美にぴったりだと思いました。美流紅は出口さんにダメ元で脚本を送ったら、読んでいただき、「脚本が面白い」とおっしゃっていただき、やってくださるとお返事をいただきました。吉田さんは、ちょうど『ルックバック』の頃にご本人にお会いする機会があって、吉田さんの中にキラキラした部分と、鬱屈した所も持ち合わせているように思い、岩隈の属性に合っていると感じました」とキャスティング理由を語った。
映画の終盤には、原作には描かれていない展開が用意されており、観客からは驚嘆の声も。「原作には起承転結の気持ちよさがありますが、これを映画にするのには、クライマックスの一山は新たに作らなければと思いました」と児山監督はいい、映画ならではのクライマックスに期待が高まる。
最後の締めの挨拶では「東京国際映画祭は僕の映画が初めて上映された場所で、またこうして戻ってこられて感慨深く、映画監督として生きてこれたことに感無量です。この映画の出演者は豪華ですが、中規模の作品で、こういった作品が劇場で長く観てもらうというのは難しい現状があります。僕はこの映画が本当に面白いと思っていますので、皆さんのお力をお借りできたら嬉しいです。是非映画を気に入っていただけたら、周りの人に勧めてください」と熱く呼びかけた。